転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


588 それが普通だと思ってると間違えちゃう事あるよね




 露店がいっぱい並んでるとこを越えて、僕たちは森の奥へ続いてる道を進んでったんだ。

 でね、森の奥へ行くからある程度進んだところで僕たちはその道からそれる事になったんだけど、

「あれ? お父さん。ベニオウの実がなってる木はそっちじゃないよ」

 お父さんがベニオウの木があるのとは全然違う方に行こうとしたもんだから、僕は違うよって教えてあげたんだよ。

 そしたらお父さんが、こっちの方でいいんだよって。

「今日森へ来たのはベニオウの実を採りに来たというのもあるけど、ニコラちゃんたちに弓での狩りのやり方を教えないといけないという大事な目的もあるだろ? だから直接森の奥へは向かわないんだ」

「そっか。森の奥より、ここら辺の方が魔物もみんな弱っちいもんね」

 ベニオウの実がなってるとこは、結構森の奥の方でしょ?

 そこまで行っちゃうと出てくる動物や魔物も強くなっちゃうから、まだ弓の練習を始めたばっかりのニコラさんたちじゃいくら撃っても当たんないよね。

 だから初めのうちは森の浅いとこにいる動物を探して、それで弓での狩りの練習をするんだってさ。

「じゃあさ、僕が獲物を探してあげるよ」

「いや、それはやめておいた方がいいな」

 それを聞いた僕はね、お父さんに魔法で獲物を探してあげるよって言ったんだよ。

 でもね、お父さんは何でか知らないけどダメだよって。

「えー、なんで?」

「それはな、この子たちが今までやっていた剣を使った狩りと弓を使った狩りは、獲物を探す段階から違うからだよ」

 僕の魔法もそうだけど、弓って遠くにいる獲物を狩るでしょ?

 ニコラさんたちは今まで剣を使って狩りをしてたから、今まではわざわざ遠くにいる魔物を見つける必要なんてなかったもん。

 だからまずは遠くにいる獲物を見つける方法を、お母さんたちから教えてもらわないとダメなんだよってお父さんが教えてくれたんだ。

「そっか、じゃあ僕も教えてもらおうかなぁ」

「ん? いや、ルディーンは必要ないだろ」

「えー、でも僕、遠くにいるのを見つける方法なんて知らないよ」

「それはそうだろうけど、お母さんだってルディーが魔法で探し出すほど遠くの獲物を見つける事なんてできないだろ」

 お母さんはお父さんよりも、遠くにいる魔物や動物を見つけるのがうまいんだって。

 でも僕は魔法でもっと遠くにいる獲物だって、簡単に見つけちゃうでしょ。

 だから普通に魔物を見つけるやり方なんて、わざわざ覚えなくってもいいじゃないかってお父さんは言うんだよ。

「危険回避のために近くにいる魔物を見つける方法は覚えておかないといけないが、流石に遠くにいる魔物を見つける方法まで覚える必要はないと思うぞ」

「あら、いっしょにいるんだから聞くだけ聞いていてもいいんじゃない? 覚えておいて困るものでもないんだし」

 でもね、そんなお父さんにお母さんは教えてあげてもいいんじゃないのって言ってくれたんだ。

「いいの?」

「ええ。何か問題が起こって魔法が使えないなんて事があるかもしれないからね」

 魔法の事なんて知らないから、本当にそんな事があるかどうかなんて解らないんだけどねって笑うお母さん。

 でもそんなお母さんのお話を聞いて、お父さんもそうだなって。

「まぁ、覚えておいて損はないか。それじゃあ、ルディーン。ちゃんと聞いておくんだぞ」

「うん!」

 そんな訳で、僕もニコラさんたちと一緒に、お母さんから遠くにいる魔物の見つけ方を教えてもらう事になったんだ。


 と言う訳でお勉強開始。

 お母さんは森の中を歩きながら、ニコラさんたちに質問したんだよ。

「ニコラさんたちは今まで、狩る獲物はどうやって見つけていたの?」

「森の中で獲物が通ったばかりの痕跡を探して、それを追っかけてみたり」

「あとは低い所になっている、動物が好んで食べる実がなっている場所で待ち伏せしたりしてました」

 ニコラさんたちの狩りのやり方はね、村の狩人さんたちもよく使ってる方法なんだよ。

 だからそれを聞いたお母さんは、それも正しいやり方だねって褒めたんだよ。

「3人で囲むようにして狩りをするのなら、そのやり方は正しいわね」

「そうなんですか? よかったぁ」

「でも弓での狩りとなるとその方法は使えないから、一度忘れていいわ」

 お母さんはそう言うとね、何で弓での狩りの時はそのやり方をしちゃダメなのかを教えてくれたんだ。

「まず、獲物の痕跡を追う方法だと、痕跡に気を取られて魔物が近寄ってきた時に気が付くのが遅れる可能性があるでしょ? 剣での狩りならそれでも素早く対応できるけど、弓の場合は近づかれた時点で対応ができなくなるから悪手なのは解るわね」

「はい」

「それと、実のなっている木の近くで獲物が来るのを待つというのは一見いい方法のように思えるけど、弓の場合は一つ大きな問題があるのよ」

「問題ですか?」

「ええ。そういう実を食べてる魔物を狩ろうと思うと、射線を確保するのに苦労するのよね」

 弓って、まっすぐ飛んでくでしょ?

 だから途中に木の枝とか葉っぱとかがあると、それにあたって獲物まで届かない時があるんだって。

「それでも技量が高ければ狭い隙間を通したり、それこそ木に登ってそこから射る事もできるわよ。でも初心者にはお勧めできないかな」

「ええ、そうですね」

 説明を聞いてニコラさんたちも今までのやり方じゃダメって解ってくれたみたい。

 だからお母さんは、それじゃあどんな所にいる獲物を狩ればいいと思う? って聞いたんだよ。

「開けたところにいる動物とかですか?」

「ええ、そうね。例えば水場。川や池、沼の周りなら矢を遮るものが無いから弓の狩りには向いているはね」

 森の中でも川は流れてるし、ちっちゃな池とかもあるでしょ。

 だからそういうとこだと、ニコラさんたちみたいにあんまり弓がうまくない人でも当てやすいんじゃないかなぁってお母さんは言うんだよ。

「イーノックカウの森で代表的な獲物と言うと、ブルーフロッグなんかがそれに当てはまるわね。この間の大発生の時なんかだと無理だけど、普段なら1匹か2匹でいるのを見つけるのも難しくはないだろうし」

「そっか。前にお母さんたちと一緒に行った時も、川や池にいっぱいいたもん。あれだったら木が近くにないから、簡単にやっつけられるよね」

 ブルーフロッグはお水があるとこにしかいないし、それに普段はあんまり動き回らないからゆっくり狙って撃てるでしょ。

 だから僕、ニコラさんたちが狩るのには一番いい絵ものなんじゃないかなぁって思ったんだよ。

 でもね、何でか知らないけどニコラさんたちは困ったようなお顔になってるんだ。

「どうしたの、ニコラさん?」

「えっと、せっかく教えてもらったのでちょっと言いにくいのですが、私たちの実力だと剣を使ってもブルーフロッグの皮を簡単には切り裂けないような状況でして」

「うん。とでも矢が刺さるとは思えないよね」

「あっ!」

 そう言えばブルーフロッグって、背中の皮が硬いから剣を使うのがへたっぴの人だとうまく切れなくって傷だらけにしちゃうって言ってたっけ。

 お母さんもそれを思い出したのか、失敗しちゃったってお顔をしてるんだよ。

「すみません、カールフェルトさん。情けない話なのですが、イーノックカウの冒険者の中でもブルーフロッグを1発で射抜いて狩れるものは殆どといない状況でして」

「そうね、うっかりしていたわ」

 それにね、バリアンさんにまでこんな風に言われちゃったもんだから、お母さんがちょっぴりしょんぼり。

 でもそんなバリアンさんも、その次のお母さんの言葉を聞いて固まっちゃったんだ。

「ブルーフロッグくらいの獲物ならキャリーナくらいの子でも普通に狩ってくるから、ついその事を忘れてしまっていたわ。そうね、私もグランリルを基準にしないように気を付けないと」



 読んで頂いてありがとうございます。

 ルディーン君は規格外ですから、シーラお母さんも基準にして考える事はありません。

 でもキャリーナ姉ちゃんはグランリルの村基準で言うと普通の女の子ですからね。

 まだ11歳の子が狩れるのだからと考えてしまっても、それは仕方がない事ですよね。

 それにブルーフロッグは魔物ではなく動物なので、簡単に狩れるものだと考えてしまったと言う訳です。


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